第66回日本栄養・食糧学会大会
会期:2012年5月18日~20日
会場:東北大学川内北キャンパス/東北大学百周年記念会館 川内萩ホール
賈慧娟1)、斉藤憲司1) 、中澤京子1) 、長谷部由紀夫2) 、加藤久典1)
(東京大学・総括1)、株式会社アルマード2))
【目的】
これまでに本研究グループでは、ラットにおいて鶏卵卵殻膜成分の長期摂取が四塩化炭素誘発性肝障を改善することを報告し、またトランスクリプトーム解析によりその作用には酸化ストレス低減が関与している可能性を示した。そこで今回は、その機序を更に明瞭にするため、長期および短期卵殻膜の摂取が生体内過酸化脂質生成に影響を及ぼすかを検討した。
【方法】
3週齢Wistar系雄性ラットを1週間予備飼育後、無作為に3群 (N=6) に分け、標準食(A, B群)および卵殻膜粉末添加食(C群)を給餌した。B、C群には50%四塩化炭素(1ml/kg)を週2回連続皮下投与し、酸化ストレスおよび肝障害を誘導した。対照A群にはオリーブ油1ml/kg を同様に投与した。なお、長期と短期摂取実験ではそれぞれ卵殻膜粉末1%を含む食餌で13週間、より微少な卵殻膜粉末2%を含む食餌で7週間飼育した。実験終了時に12時間絶食後、頸動脈から採血し、肝臓等を摘出した。肝機能指標や体内抗酸化酵素、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)値をそれぞれ測定した。
【結果】
いずれの飼育期間においてもC群では、四塩化炭素投与により生じた体重減少、肝臓腫大、上昇したAST、ALT活性の改善効果が認められた(P<0.05)。一方、血漿中superoxide dismutase、catalaseなど抗酸化酵素の濃度は変化しなかったが、血漿および肝臓中のTBARS濃度が卵殻膜長期と短期摂取実験ではそれぞれ約15から25%低下した。以上の結果から、卵殻膜は四塩化炭素により誘発した過酸化脂質の生成を抑えることで、結果的に肝臓の炎症拡大、さらに進行する肝障害を抑制している可能性が推察された。また、粒子径は小さい方が効果的であることが明らかになった。現在、これらの結果と併せて酸化ストレス関連遺伝子について詳細なトランスクリプトーム解析を行っている。
1)斉藤ら、日本農芸化学会2009年度大会講演要旨集、p57
2)賈ら、日本食品科学工学会 2011年度大会講演要旨集、p58