NPO法人 日本卵殻膜推進協会

卵殻膜に関する研究発表

加水分解卵殻膜塗布によるヒト皮膚の粘弾性及びマウス皮膚Ⅲ型コラーゲンの増加

第44回日本結合組織学会学術大会・第59回マトリックス研究大会合同学術集会
会期:2012年6月7日・8日
会場:日本青年館ホテル
跡見順子1)、藤田恵理2)、清水美穂2)、谷脇香3)、吉村浩太郎4)、跡見友章5)、廣瀬昇5)、長谷部由紀夫3)
(東大アイソトープ総合センター1)、東大院情報理工学研究科・知能機械情報学専攻2)、株式会社アルマード3)、東大院医学研究科・形成外科学4)、帝京科学大・医療科学部 理学療法学科5))

ヒト皮膚線維芽細胞は、細胞膜を真似た人工ホスホリルコリンポリマーに結合したアルカリ加水分解卵殻膜(ASESM)上で培養した場合、真皮に近い環境を与えることで、創傷治癒過程初期に必須のⅢ型コラーゲン、デコリン、MMP2遺伝子を、コラーゲンコート及び細胞培養ディッシュ上の条件に比較して有意に高く発現することを、昨年の学術大会で発表した。このin vitroにおける研究結果を受け、本年は、ASESMのin vivoでの効果をマウスへの塗布によって検証することにした。
へアレスマウスの背部皮膚に10%ASESM溶液あるいは0%溶液を10日間塗布した後の細胞外マトリックス遺伝子の発現を評価したところ、驚くべきことにin vitroの系と同じ遺伝子発現上昇が見られた。そこでさらにヒトを対象とした実験を実施した。
被験者(20-65歳、女性30名)に、二重盲検法により、上腕部と前腕部の皮膚に1%あるいは0%ASESM化粧水と保湿クリームを1日2回、上腕部及び前腕部の片側に12週間塗布したあと、皮膚粘弾性の変化をキュトメーターで評価した。その結果、1%ASESM入り化粧品使用群で、塗布前後の前腕外側と上腕部において、皮膚粘弾性指標の有為な上昇が見られた。In vitroおよび動物実験の結果を踏まえ、ヒトにおける弾力性アップには、『III型コラーゲン・デコリン・MMP2』の組み合わせが鍵となると考えられる。
鶏卵の内部では、胚発生の期間、外部から酸素以外の物質を得られない。したがって卵殻膜は、卵に物理的強度と水分保持能力を与えるだけでなく、胚発生に必要な因子を供給している可能性がある。したがって、卵殻膜は、皮膚線維芽細胞に対しても発生過程と類似のメカニズムで真皮の再生プロセスをケミカルに刺激し、皮膚環境を健康な状態に維持するのに貢献していると考えられる。