卵殻膜の効用は古くから人類の生活の中で活かされており、中国では明朝の時代の医師で本草学者であった李時珍(りじりん、1518年-1593年)が、それまでの中国の薬物の文献を整理し、さらに当時使われていた薬物を加えるなどして完成させた『本草綱目』(1596年完成)にも創傷等の治療薬として記載されています。
日本でも戦国時代から野戦での負傷に貼られ早期に治療するために用いられたと伝えられており、また、本草綱目が江戸幕府開府まもない1609年には日本に伝わっていることからも、卵殻膜が創傷治癒に用いられることが広まっていったようです。
それは現代へも伝えられ、国技である相撲界では傷を治療するために、今も卵殻膜を常備薬として使用しています。
なぜ、医学の発達した現代でも卵殻膜を使用しているか、という理由については、その傷の治り方の違いにあり、外科的な傷口の縫合による治療なら簡単に傷口は閉じるものの、傷跡の細胞が硬くなりそこにまた衝撃が加えられるとすぐに傷口が開いてしまいます。一方、卵殻膜を貼って治療したあとの傷口の細胞は柔軟性があり、自然な状態で皮膚が再生されるために傷が再発しにくく、こうした過去からの経験により今も卵殻膜が使用されているようです。
こうして卵殻膜は、約j400年以上前より、生活の知恵としてしっかりと人類の生活に息づいています。